日本の庭でも広くその存在が知られているキンセンカの花。キンセンカと言えばその鮮やかな黄色やオレンジ色が特徴的ですね。けれど花言葉の世界における黄色の花にはちょっと要注意。それは花言葉の意味にネガティブな要素が多いからと言われています。
元気な見た目のイメージからは想像もできないほどの花言葉とは一体どういうものなのか?ここではキンセンカが持つ花言葉の意味を探り、誕生のきっかけとなったギリシャ神話のエピソードについてもご紹介していきます。
キンセンカの花言葉の意味
https://www.flickr.com/
キンセンカの花言葉には「悲嘆」「寂しさ」「失望」「別れの悲しみ」「暗い悲しみ」などまさにネガティブのオンパレードともとれる花言葉の意味がたくさんあります。このほかキンセンカの花言葉には「慈愛」や「乙女の美しさ」なる意味も探せますが、メインのインパクトが強すぎてあまりピンと来ないのが実際です。
西洋において黄色い花がネガティブな象徴として見られる理由には、ローマ帝国によるキリスト教迫害の歴史も関係しています。今でこそメジャーな宗教であるキリスト教も、ローマで広くその存在や思想が受け入れらるには大変な時間を要しました。
キリスト教の宗教観は時にさまざまな誤解を生み、時の皇帝たちによって容認されたり、圧倒的な力で弾圧されたりと非常に不安定な対象となったのです。特に暴君として名高いネロ、さらにディオクレティアヌスが皇帝であった時代には大々的な迫害がなされています。
そしてキンセンカが持つ花言葉の意味と時の皇帝たちが関係している最大の理由は、その身に付けていた衣の色と言われています。キリスト教徒にとって迫害を指揮した皇帝たちの衣はキンセンカが持つ色そのもの。それだけにキンセンカが持つ花言葉に悲しみや失望を表す意味が多く存在するといっても過言ではないのです。
キンセンカの花言葉の英語の意味
では、花言葉の本場である英語圏でのキンセンカの花言葉をみていきましょう。
西洋のキンセンカの花言葉では悲嘆を表す「grief」、絶望の意味の「despair」、悲しみや悲哀を表す「sorrow」という表現が使われています。やはりここにもキリスト教の歴史的背景が根強く残っているようですね。日本語よりもむしろ直線的で、花言葉の意味を強調しているようにも解釈できます。
スポンサーリンク
キンセンカとギリシャ神話
さて、キンセンカの花言葉が持つ悲しみや悲哀の意味は西洋の宗教的思想の他にもう一つ理由があります。それがギリシャ神話に残されている恋の物語。まずはアポロンとレウトコエ王女の悲しい恋物語から簡単に解説しておきましょう。
太陽神アポロンとレウトコエ王女はすでに恋人同士の関係でした。それを知っていたにもかかわらず水の精ニンフはアポロンに恋心を抱きます。何とかしてアポロンを振り向かせたいと考えたニンフは、王女の父親に二人の関係性を告げ口しようと思いつきました。
父親はにニンフの言葉を真に受け、なんと自分の娘である王女を生き埋めにしてしまいます。しかし間もなく自分の行った愚かな行為に気付いたニンフは、アポロン(=太陽)を見つめたままその場に座り込んでしまうのでした。
そのまま9日間という時間が過ぎ、ニンフの体がキンセンカの花に姿を変えていたというのがこのお話の結末です。これはキンセンカが持つ花言葉の中でも「別れの悲しみ」または「乙女の美しさ」に通じるもので、身勝手な想いの愚かさ、はかなさを示す意味とも解釈できます。
戒め的な形でキンセンカに姿を変えてしまったニンフですが、王女と妖精という立場の違いから全く違った生涯を送る事になるとは、これこそとても悲しい話の成り立ちではないでしょうか。
また同じくアポロンとキンセンカをめぐる話では、クリムノンという少年とのボーイズラブ的な神話も有名です。純粋無垢なクリムノン少年は、アポロンの存在を身近に感じられる昼間がとくかく大好きでした。当然陽が落ちた夜はアポロンの姿も隠れてしまうため悲しみにくれるのが彼の日常でした。
ピュアで真っ直ぐなクリムノンの想いはやがてアポロンも知るところとなりますが、これをこころよく思えなかったのが雲の神。二人の関係を何とか邪魔しようと、なんとその力で8日間も太陽の姿を隠してしまったのです。そんな雲の神の策略など知らないクリムノンは、いつ現れるともわからないアポロンの方向を見つめたまま待ち続けました。
アポロンが雲の神に隠されて8日が過ぎ、9日目になってようやく姿が見えた頃には時すでに遅しでした。クリムノンはアポロンを待ち焦がれたまま息絶えていたのです。アポロンはクリムノンの自分に対する真っ直ぐな気持ちを受け止め、その亡骸をキンセンカの花に変えて二人の愛の証としたのでした。
キンセンカの花が陽の差す方向を向いて咲く理由は、神話の中ではかなく散った者たちに由来するものという解釈があります。ニンフもクリムノンも置かれたシチュエーションこそ違えど、アポロンを求める気持ちは揺らがなかったということなのでしょうね。
スポンサーリンク
キンセンカの種類など花言葉に関する豆知識
https://www.flickr.com/
一般的な花苗としても流通しているキンセンカの品種は、カレンデュラ・オフィシナリスという種類で八重咲のものが主流となります。この品種を元にしたキンセンカの改良種では、ナカヤスキンセンカやオレンジスターといったものも有名です。
またヨーロッパではどこにでも自生しているキンセンカの種類がカレンデュラ・アルベンシス。別名「冬知らず」とも呼ばれるこの種は、越冬することができる宿根草であることがその別名の由来となっています。ちなみにキンセンカと似た花ではマリーゴールドがありますね。
英名で言うところの「ポットマリーゴールド」はキンセンカの別名ですが、本家のマリーゴールドとは分類上の属が違うので厳密にいうと別種。このように、キンセンカを通してわかるように花の世界は似て非なる関係性が多々あることも面白い特徴の一つです。
スポンサーリンク
キンセンカの誕生花
花言葉の意味では確かにネガティブなものが多く、人によってはキンセンカを贈り物としてふさわしくない花と考えることもあるでしょう。ただ1年の間でも長い期間目にすることのできるキンセンカは誕生花としての好適日をたくさん持っている花でもあります。
キンセンカはフレッシュな生花以外にもハーブティーや美容目的で商品化されているものもあります。花言葉が持つの意味をソフトに受け入れるなら、こういったキンセンカ関連の贈り物で気持ちを表すことも可能なのではないでしょうか?
次にご紹介する日を参考に、色鮮やかなキンセンカを贈り物のひとつにランクアップさせてみましょう。
1月12日および13日(黄色のキンセンカの好適日)
2月8日、9日、13日、26日
3月9日、16日、26日(オレンジ色のキンセンカの好適日)
4月2日
8月3日、24日、29日
11月7日
12月15日
スポンサーリンク
キンセンカの原産地
今ではどこの庭でも当たり前のように見かけるようになったキンセンカの花。ではキンセンカは一体いつ頃どのようにして日本へやってきた花なのでしょうか?
キンセンカの原産はヨーロッパ南部、地中海沿岸の地域です。特にカナリア諸島は20種ものキンセンカが分布している有名な土地柄です。17世紀には中国経由で日本にも渡来し、昭和初期には仏壇に供える花としての栽培が盛んにおこなわれたと言います。
現在では春の南房総を代表する花になっていますが、確かに年配の方々の中にはキンセンカ=お供え用と考えられることもあるので、そういった意味でも祝い事に贈る際には注意が必要かもしれません。
スポンサーリンク
キンセンカの名称・名前の由来
キク科キンセンカ属に分類されるキンセンカの学名は、カレンデュラ・アルウェンシスです。このカレンデュラはラテン語でカレンダーの語源ともなったカレンダエ(毎月1日の意味)に由来すると言われ、アルウェンシスは「薬効がある」といった意味です。薬用ハーブとしての効果も持つキンセンカは、髪を染める染料や食用、また虫刺されの薬など幅広い用途のある花として、ヨーロッパでは古くから大切にされてきた花です。
一方、キンセンカの和名を漢字で書くと金盞花。これは金色の盃の花という意味で、花びらの様子が盃(さかずき)のように見えるとことに由来しています。また別名となるとこれまた多彩で、ポットマリーゴールドの他に「長春花(チョウシュンカ)」や「時知らず」なる呼び名もあります。長春花と時知らずは、この花の開花期が非常に長いことに由来した別名といえるでしょう。
ちなみに漢字表記の金盞花に限った意味では、賭けに勝ったらお金より珍しい花でその対価をもらった方が良いとする中国の言い伝えも残っているようで、金盞花も「金銭花」の表記であったと言われています。
スポンサーリンク
キンセンカの開花時期
ではあらためてキンセンカが開花する時期についてご紹介しておきましょう。
キンセンカの旬の時期は春。キンセンカの開花は12月から翌年の5月にかけてとなり、最も多く出回る時期は3月から4月です。耐寒性の強さ・丈夫さで栽培難度の低い花であることから、現在のように一般家庭のガーデニングでも重宝される花の種類となっています。
黄色からオレンジ系の鮮やかさは、寂しくなりがちな冬場の庭を暖かく包んでくれ、切り花・庭植え・鉢植えなどさまざまな方法で楽しむことができるのもキンセンカのいいところではないでしょうか。
まとめ
今回は、身近なキンセンカの花の花言葉とその誕生のきっかけとなった神話のエピソードなどについてご紹介しました。一たび花言葉の世界に足を踏み入れると、いままで知らなかった奥深いエピソードの数々に触れることができます。
花言葉は単にその解釈を知るだけでなく、探っていく面白さを感じていくことに更なる面白さがあるものです。このキンセンカに関しても、見た目の華やかさ・明るさとは全く逆の悲しい恋物語が隠されていましたよね。確かに悲しくてつらいお話ではありましたが、それがかえってこの花のピュアな部分を印象付けているとも考えられます。
キンセンカの花言葉をお伝えてしてきました。